漆器:9千年の歴史
日本の文化を象徴する伝統工芸品は器に関するものが多い。茶道にも用いられる美濃焼の陶器や、ドイツのマイセン焼のもととなった磁器の有田焼柿右衛門など。
しかし、最も古い伝統工芸品は漆器です。漆はウルシの木に傷をつけて採取した天然樹脂です。その漆を何層も塗布した木の器は、シンナーやアルコールなどの薬品でも、色褪せたり劣化することがなく、塗装面は抗菌・殺菌の作用があり、菌や虫の繁殖を防ぎます。また、強度を強くする優れた性能があります。大腸菌やカビを付着させて36˚Cの環境下で24時間放置した研究機関の実験では、大腸菌は千分の一に減少し、カビに対する抗菌効果も顕著でした。漆は接着剤としても利用されていました。
最古の漆器は北海道の縄文時代の遺跡から9千年前の漆器がとても良い状態で発見され、また福井県の貝塚から1万2600年前の漆の木片が発見されています。縄文時代は約1万6千年前から3千年前まで、1万年以上続いた時代です。近年は、続々と新たな発見が続き、世界中の考古学者たちを魅了しています。地球上の氷河期が最後に終わったのが1万9千年前、そこから温暖化が始まり縄文時代の初めまでに海水面は120m上昇しました。5900年前のものとされる青森県の三内丸山遺跡は最初のエジプト王朝の時代よりも古いものです。
縄文時代は温暖な気候で、海産物や木の実なども豊富で、農耕も行われていました。豊かな四季のある自然の中で、漆器が誕生しました。生の漆が肌につくとかぶれることがありますが、これはウルシオールという成分によるアレルギー反応です。かぶれの程度は個人差がありますが、東洋人よりも欧米人の方がかぶれやすいと言われています。
現在まで伝統工芸が脈々と継承されていますが、石川県の輪島に住む漆職人のスザーン・ロスさんは英国人女性です。彼女は学生時代に江戸時代の漆の硯箱に出会い、その魅力にひかれて22歳で来日。30年以上、漆職人を続けています。
彼女のHPはこちら